マンションは物件の規模が大きいため、定期的なメンテナンスをしっかり行っていないと経年劣化の影響を受けて、何かしらのトラブルが生じる可能性があります。
そこで、経年劣化によるトラブルを未然に防ぐために行われるのが大規模修繕です。大規模修繕とはどんなものなのでしょうか?
この記事では、大規模修繕とはどんなものなのか、大規模修繕について徹底解説します。
大規模修繕とは
大規模修繕とは、物件の規模が大きく、経年劣化の影響を受けやすいマンションにおいて、定期的に行われるメンテナンスのことです。建物の資産価値を維持する、トラブルを未然に防ぐために躯体を維持するための補修や共用部分の改修を行います。
「共用部分とはどこのことを指すの?」と疑問を抱いた人もいるのではないでしょうか?マンションは専有部分と共用部分に分かれます。専有部分とは、マンションの住戸部分です。専有部分は各部屋の所有者が原則自由にリフォームを行うことができます。
共用部分とは、マンションから専有部分を除いた残りです。例えば、エントランス、廊下、駐車場、エレベーターなどは共用部分に該当します。
バルコニーや専用庭、玄関扉、窓ガラス、インターホンなどは専有部分と思われがちですが、共用部分として扱われるので注意が必要です。
共用部分は、マンションの入居者全員の共有財産であるため、1人の入居者が勝手に修繕を行うことはできません。共用部分に設置されている設備の耐用年数を確認しながら修繕を行っていきます。
大規模修繕の工事場所とは
マンションには、定期的にメンテナンスを行わなかった場合に、大きなトラブルに発展する可能性がある場所がいくつかあります。例えば、以下のような場所です。
- 屋根
- 柵や手すり
- 外壁
- 給排水管
屋根は、塗装や防水処理が築年数の経過とともに弱まってくるため、そこから雨が浸入して雨漏りに発展する可能性があります。
柵や手すりは、錆や腐食によって崩壊するリスクがあります。そのまま放置しておいた場合、大きな事故に発展する可能性が高いので注意が必要です。
外壁は、経年劣化によるひび割れが生じていると、そこから雨が浸入して雨漏りに発展する可能性があります。また、タイルの場合、タイルの破損や剥がれが生じてマンション付近を歩いていた人に当たると大きな事故に発展する可能性があるので注意が必要です。
給排水管は、経年劣化によって亀裂が生じていると水漏れのリスクが高くなります。また、詰まりが生じた場合には、逆流によるトラブルに発展する可能性があります。
このように、定期的なメンテナンスを行わなかった場合、資産価値が減少するだけでなく、何らかのトラブルに発展する可能性があります。そのため、これらの場所に対する定期的なメンテナンスは必須と言えるでしょう。
大規模修繕の工事周期とは
国土交通省によると、大規模修繕は12年ごとに行うことを推奨しています。その理由は、各場所の交換や修繕を行う目安が12年で重なるためです。交換や修繕のおおよその目安をまとめると以下の通りです。
場所 | 工事内容 | 工事周期 |
---|---|---|
屋根 | 塗装・補修 | 11~15年 |
防水処理 | 21~25年 | |
葺替 | 21~35年 | |
共用部 (階段・廊下など) |
鉄部塗装 | 4~10年 |
塗装・防水処理 | 11~18年 | |
外壁 | 塗装 | 11~18年 |
タイル補修 | 12~18年 | |
給排水管 | 高圧洗浄 | 5年 |
交換 | 30年 |
工事周期は工事場所によって異なります。これらを工事周期の目安に合わせてバラバラに行った場合、入居者の生活に支障が出る、工事のたびに足場を設置することで無駄な費用が増えることになります。
耐用年数が短く工事規模の小さな部分はこまめに修繕を行いますが、耐用年数が長く工事規模が大きくなるものはなるべくまとめて行うのが一般的です。
あくまでも目安ですが、12~15年に1回大きな工事が行われると覚えておきましょう。
大規模修繕の費用はいくらかかる?
大規模修繕にいくらかかるか気になっている人も多いと思いますが、大規模修繕にかかる費用はマンションの規模によって大きく異なります。
1つの目安として、大規模修繕にかかる費用は1戸あたり約100万円と言われています。つまり、30戸のマンションでは、100万円×30戸で約3,000万円かかるということです。
12年周期で大規模修繕工事を行う場合には、1回目の工事は上記の目安を想定しておけば問題ありません。しかし、2回目以降は修繕場所が増えて目安よりも修繕費用がかかるため、計画的に修繕費用を積み立てておくことが重要と言えるでしょう。
大規模修繕はどのくらいの工事期間になる?
大規模修繕工事の期間は、マンションの劣化状況や規模によって異なります。50戸以下の小規模のマンションの場合、2~3ヶ月が工事期間の目安です。
工事期間は2~3ヶ月ですが、どの場所に対してどのような修繕を行うか、どの工事会社に依頼するかを決める準備期間を含めると1~2年程度を見ておく必要があります。
準備に時間がかかるため、逆算してしっかりと計画を立てましょう。
大規模修繕は法律で義務付けられている?
大規模修繕が法律で義務付けられているのかどうか気になっている人も多いのではないでしょうか?
不動産関係を管轄している国土交通省は、12年を目安とした大規模修繕を推奨しており、大規模修繕に関するガイドラインを作成しています。
しかし、あくまでもガイドラインを作成して推奨しているだけで、義務化しているわけではありません。
そのため、マンションの劣化状況や入居者の意見などを踏まえながら、マンションによって自由に大規模修繕の周期を設定することが可能です。
しかし、大規模修繕はある程度の費用がかかるので、できる限り行いたくないという理由で先延ばしを選択しているのはあまりおすすめしません。
その理由は、先延ばしにすることで資産価値が減少する、何かしらのトラブルに発展する、劣化が進行して次の修繕費用が増える可能性があるなどのデメリットを伴うためです。
法律で義務付けられていないと言っても、上記のような事態を未然に防ぐためにも修繕は定期的に行う方が良いと言えるでしょう。
賃貸住宅も大規模修繕を参考にするのが理想
マンションには分譲マンションと賃貸マンションの2種類あります。分譲マンションには複数の所有者がいますが、賃貸マンションには入居者が数人いても所有しているわけではありません。
賃貸マンションは所有者がオーナー1人だけなので、オーナーが自由に修繕を行うかどうか決めることが可能です。
そのため、賃貸マンションのオーナーの中には、支出を増やしたくないという理由で修繕を行わないオーナーもいます。
しかし、修繕を行わなかった場合は、資産価値が低下する、劣化が進行して人気が下がって空室が目立つようになるといったデメリットが生じます。
安定した賃貸経営を行うためにも、分譲マンションの大規模修繕を参考にしながら修繕を定期的に行いましょう。
まとめ
戸建住宅は所有者が修繕を行うかどうかを自由に決めることができますが、マンションは所有者が複数いるため、自由に決めることができません。入居者全員の意見を踏まえながら行うかどうかを決定します。
マンションの大規模修繕は、国土交通省がガイドラインを作成して12年周期で行うことを推奨しています。義務ではないため、必ずしも従う必要はありません。
しかし、資産価値の減少や劣化で発生するトラブルを未然に防ぐためにも、ガイドラインに基づきながら修繕を行った方が良いと言えます。賃貸マンションの場合も同様です。
資産価値の減少や空室の増加を未然に防ぐためにも、分譲マンションと同様にしっかりと計画を立てながら大規模修繕を行いましょう。